穀物高騰/食の危うさを見直す時(日本農業新聞)

掲載日:2008-2-16 11:51:00

世界の穀物が高騰している。シカゴ商品取引所で小麦は、昨年末に1ブッシェル(27.2キロ)9.7ドルと史上最高値を更新した後も続騰、2月に入って10.63ドルまで値を上げ、大豆も14日には1ブッシェル(同)13.68ドルと史上最高値を更新、トウモロコシも1ブッシェル(25.4キロ)5ドルを上回り、11年ぶりの高水準にある。

穀物高騰の要因は、小麦はカナダや欧州の減産に加え、オーストラリアで2年連続の不作、トウモロコシはバイオエタノール向けの需要が急増、大豆は米国でトウモロコシへの大幅な作付け転換による減産などが直接的な引き金である。しかし、その底流には、1.地球温暖化で異常気象が頻発する危険 2.穀物のバイオ燃料仕向け需要との争奪 3.途上国の人口増と所得向上による需要増―がある。決して一過性の要因ではなく、世界の食料需給には決定的な構造変化が起きている。

米国農務省が8日に発表した2007/08年度の穀物期末在庫率は、14.6%しかなく、国連食糧農業機関(FAO)が安全在庫水準としている17~18%を大きく下回る。食料危機が叫ばれ、米国が大豆の禁輸措置をとった1972/73年度の在庫水準15.4%をも割り込んでいる。

若林農相が主催する「食料の未来を描く戦略会議」に農水省が提出した資料によると、「食料はいざと言う時は自国内の供給が優先される」のが常である。世界的に食料需給が引き締まり、直近の情勢として、ロシア、ウクライナ、中国、インド、アルゼンチンなど8カ国が農産物の輸出規制をし、「食料の奪い合いにより、わが国の食料調達に支障が生じている」と報告。ベニザケなどの水産物輸入で中国に買い負けている事例や、トウモロコシの輸入がバイオ燃料需要との争奪で、わずかしか成約できなかった商社の話を紹介している。

昨年来の穀物価格の高騰は、畜産農家を直撃している。度重なる値上げで、1~3月期の配合飼料価格(建値)は1トン約5万8100円。急激な価格上昇以前の06年7~9月期に比べ136%の水準である。6期連続で価格補てんされてはいるが、農家は実質1トン当たり7700円もの負担増になっている。来週にも決まる畜産・酪農対策では、配合飼料の価格対策が充実・強化されなければならない。

同時に、輸入農産物を原料にした食品の値上げラッシュが食卓を襲っている。輸入小麦の政府売り渡し価格は4月から3割再々値上げされ、消費者価格への大幅な転嫁は避けられそうにない。折から中国製ギョーザ事件もあり、食の安全・安心面からも食料を海外に依存する危うさを思い知るはめになった。

政府は食料安保政策として「輸入先の多元化」など小手先の施策ではなく、食料自給率向上、国産振興に本格的に取り組む時だ。