南極の氷の減少、規模・速さ予測を上回る 米研究

【11月23日 AFP】これまで地球温暖化の影響をあまり受けていないとみられていた東南極(East Antarctic)で2006年以降、数十億トンの氷が融解し、将来的に海面上昇につながる恐れがあることが明らかになった。米テキサス大学(University of Texas)の研究チームが、22日の英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」で発表した。

また、東南極よりも小さいがより不安定な状態になりつつある西南極(West Antarctic)の氷床も、著しく質量が減少しているという。研究者らは、地球温暖化が西南極の急速な崩壊を引き起こすのではと懸念している。西南極には、融解した場合、世界の海面を約5メートル上昇させるだけの氷が存在している。

2007年、国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)は、2100年までに海水面は18~59センチ上昇するとの予測を発表している。だが、この数字は、グリーンランド(Greenland)や南極にある氷床が崩壊した場合の影響は考慮されていない。

現在、研究者らは、たとえ温室効果のある二酸化炭素(CO2)を削減したとしても、海面は約50センチほど上昇する可能性が高いとみている。海面が50センチ上昇すると、小さな島しょ国で人が住めなくなったり、現在数億人が居住する肥沃なデルタ地帯などに大きな損害を与える。

テキサス大のジャンリ・チェン(Jianli Chen)教授らの研究チームは、南極の海洋と氷床の相互作用を、09年1月までの7年間にわたって分析した。データは、地球の重力を測定することで海洋や極地での大規模な変化を探知する地球観測衛星グレース(GRACE)2機が収集した。

研究チームによると、西南極では毎年、260億トン前後の増減はあるものの平均で約1320億トンの氷が海水に崩落しているという。これは、さまざまな手法によるこれまでの研究結果と一致している。

また、今回初めて、東南極、特に沿岸部でも、年に平均約570億トンの質量が失われていることが明らかになった。研究チームによると、誤差は予測とほぼ同じ程度であり、氷の消失量は数十億~100億トンだとみられている。これまで、研究者らは、東南極は質量の蓄積・減少が同程度で「バランスが保たれている」と考えられていた。

研究チームは、「氷の消失が近年、南極全土で加速していることが明らかになった。南極は今後まもなく、世界の海面上昇に大きな影響を与えることになるだろう」と結論づけた。

前週の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された別の研究では、前回の「間氷期」の南極の気温が上方修正された。この研究によると、12万8000年前にピークを迎えた前回の間氷期(最終間氷期)では、南極地域の気温は現在よりも約6度高かったという。これはこれまでの予想よりも約3度も高い温度だ。

一連の研究結果は、今日の水準とほぼ同等の大気中の温室効果ガス濃度に対し、研究者が考えていたよりも、南極が影響を受けやすい可能性を示している。最終間氷期の海面の高さは、現在よりも5~7メートル高かったと考えられている。(c)AFP