日本の洪水被害年1兆円増、ブナ林消滅 温暖化続けば

朝日新聞 2008年05月30日01時44分

地球温暖化が日本に及ぼす影響に関する最新予測が29日公表された。このまま温暖化が進むと2030年代には豪雨の増加で洪水被害額が年平均1兆円分増えたり、40年代から国全体のコメの収量が減少に転じたりする。これまで比較的影響が小さいとみられていた温帯の日本でも被害が深刻なことを具体的に示した内容だ。

国立環境研究所や農業環境技術研究所など14の研究機関でつくる「温暖化影響総合予測プロジェクトチーム」が3年間にわたって研究した成果。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のシナリオの一つに基づき、現状のまま世界で温室効果ガスの削減が追加されない前提で、日本の平均気温が1990年比で2030年に1.9度、50年に2.8度、2100年に4.8度上がると仮定して検討した。

水資源、森林、農業、沿岸域、健康の5分野で、2050年ごろまでを中心に今世紀中に地域別にどんな影響があるか分析。生態系には、20年代の1.5度前後の気温上昇でも松枯れ面積の拡大などの影響が出る。40年ごろには、ブナ林の分布に適した地域がほぼ半減することが見込まれる。

洪水や土砂災害の危険性は30年代の2度を超えると急速に高まり、高潮で浸水被害を受ける可能性のある人口は現在の1.7倍に増える。農業は40年代の2.6度の上昇までは二酸化炭素が生育を促す効果などでコメの増収が見込めるが、それ以上では減収となる。

京都議定書に続く次期枠組みの合意内容次第で、将来の気温上昇幅は左右される。世界全体で2050年に半減以下にできれば2度前後の上昇に抑えられるとされている。