九十九島の海でも異変 地球温暖化の影響?(西日本新聞)

九十九島の海でも異変 地球温暖化の影響? 熱帯魚越冬、ヒジキ生育悪く…

2008年5月2日 00:51 カテゴリー:科学・環境 九州・山口 > 長崎

地球温暖化の影響は、穏やかな入り江の景勝地、九十九島(長崎県平戸市‐佐世保市)の海にも影を落としているようだ。代表的な熱帯魚であるクマノミの越冬が確認され、亜熱帯を主な生息域とする海洋生物の捕獲情報も相次いでいる。

「お客さんは喜びますが、四季が明確なこの海の魅力が失われるようで複雑な気持ちです」。佐世保市鹿子前町でダイビング店を営む緒方義憲さん(61)は、数年前から枕島近海など南九十九島の広範囲で真冬にクマノミを目にしている。熱帯のサンゴ礁に広く生息するクマノミが通年で見られるのは、九州西岸では従来、同県西彼杵半島が北限とされていた。九十九島近海では「夏場に対馬海流に乗って北上することはあっても、冬には死んでいたのに」。緒方さんは首をかしげる。

長崎県総合水産試験場(長崎市)の調査では、同県沿岸の海水温(水深10メートル)は1986年ごろから特に冬季を中心に上昇傾向にある。県北水産業普及指導センター(平戸市)の観測でも、北九十九島の前島付近の2007年の年平均海水温(同)は、03年と比べて約1.1度高い。緒方さんは「たとえ一度でも、魚にとっては大きな変化では」と、温暖化の影響と推測する。

南方の海洋生物の目撃例はほかにもある。

西海パールシーセンター(佐世保市)によると、(1)沖縄など亜熱帯に生息するウミウシの一種「ヤマトメリベ」の発見情報が、佐世保湾を中心に昨年約20件あった(2)香港やフィリピンなどに分布する二枚貝「アシベマスオ」が、03年の南九十九島の調査で見つかった‐などがある。同センターの山口陽介・水族研究室係長(33)は「海流の変化など他の要因も考えられるが、地球温暖化が影響した可能性は十分にある」と話す。

海と向き合って暮らす漁業関係者も、変化を肌で感じている。佐世保市鹿子前町の漁業林喜代子さん(62)は、桂島や牧の島の波打ち際で春に採集する天然ヒジキが「今年は全然とれない」と嘆く。コンブ、ワカメなど、冬に成長する海藻類は今季、軒並み生育が悪いという。独立行政法人西海区水産研究所(長崎市)は「海水温の上昇が海藻類の成長を鈍らせ、また海藻を食べる魚の種類や数を増やした可能性もある」と分析している。

=2008/05/02付 西日本新聞朝刊=