地球温暖化:衝撃の未来像、シミュレーション映像--CSで

毎日新聞

NHKをはじめ民放各局は、今年に入ってからエコロジー、環境問題特集を多く放送している。7月の北海道洞爺湖サミットの主要議題になるとの理由もあるが、私たち生活者にも危機感がようやく浸透してきた証しだろう。地球SOSの警告を以前から発してきた放送局「ナショナル ジオグラフィック チャンネル」(CS放送)制作の番組「6℃が世界を変える」は、地球温暖化の恐怖を分かりやすいシミュレーション映像で見せる衝撃作品だ。【網谷隆司郎】

オーストラリアの干ばつと森林火災の頻発、パリを襲った夏の熱波による高齢者の多数死亡、米本土に上陸したハリケーンによる大水害、グリーンランドの氷床消失、ヒマラヤの氷河縮小、アマゾンの熱帯雨林消失と深刻な水不足、グレートバリアリーフのサンゴの大量死……一つ一つは私たちも知っている現実だが、その点を線で結びつけると、CO2などによる地球温暖化が引き起こす近未来の衝撃予想図が浮かび上がってくる。

2時間スペシャル「6℃が世界を変える」は、現在より平均気温がセ氏1度、2度と上がっていき、6度上がったらこの地球はどうなるか、をコンピューター映像を駆使してバーチャル映像で見せる。2月にアメリカで放送され、ニューヨーク市内が水没する映像の衝撃もあって各紙が取り上げた話題作。

日本の事例はないが、今のまま気温が上昇し続ければ100年以内に地球が別の星になってしまうというデストピア(絶望未来図)が描かれている。何万もの科学調査と気象データをもとに環境保護論者、マーク・ライナスが書いたベストセラー「6℃」の内容を一部引用し、「気象難民」が何億人も生まれる、しかも貧しい人々が一番被害を受けるとの予想を示している。

イギリスで近年上質のワインができ、近未来にはカナダ北部が豊かな農業地帯になり、スカンディナビアの海岸がリゾート地帯になるなど、気候変動がもたらすプラス面も紹介されるが、それも気温1度程度上昇の世界。それ以上になると、100年に1度の大災害が4、5年に1度と頻発、ガンジス川が干上がり、アルプス山脈の冠雪が消滅、海水上昇でバングラデシュなど国土がなくなる……とやはり絶望的な未来像が示される。

急速な温暖化にストップをかけるには私たち一人一人にもできることが紹介されるが、家庭電器の待機電力の節電など限られた対策だ。

宇宙に1メートルの大きさの鏡を100万枚つるして太陽の熱を遮断して地球の熱を下げるといった壮大な案もあるが、今は地道な一歩しかないようだ。

放送は26日午前8時、午後8時、27日午後2時。

毎日新聞 2008年4月24日 東京夕刊