地球温暖化問題に危機感持て(知財情報局)

地球温暖化問題に危機感持て、早急に低酸素社会への道を進むべし

【その他】発信:2008/03/31(月) 08:43:48

~HIAのシンポジウムで討論~

(社)先端技術産業戦略推進機構(HIA)は、第2回国際シンポジウム「地球温暖化と低酸素・循環型共生社会への道」を、東京・赤坂の国際交流基金国際会議場で開催した。会場には250名以上の参加者が集まり、温暖化問題への関心の高さをうかがわせた。

今夏7月に日本で行われる洞爺湖サミットでは、地球温暖化防止の枠組みが主要テーマの一つに予定されている。これを睨んで、今回のシンポジウムでは同機構の西澤潤一会長(首都大学東京学長)が、地球規模の温暖化・エネルギー対策の切り札として、環境問題の少ないミニダムによる水力発電と、交流より50倍も遠くまで電力を効率よく運べる直流送電の技術を活用した電力システムを提唱する講演を行った。

西澤氏は「人類は当面、温暖化対策に取り組む必要がある。自分やその子どもの時代はともかく、さらに次の孫の時代にCO2で人類が滅亡することを想像すれば、現在、その対策に手をこまねいている時ではないことがわかるはずだ」と述べ、大気中のCO2濃度が4%以上に高まると人間が生存できなくなる危険を警鐘し、低酸素社会・循環型共生社会を実現するため、一刻も早く同氏が提唱する発電システムを、国をあげて導入すべく検討するよう声を大にして訴えた。

続いて、同機構顧問である内田盛也氏(日本学術交流財団理事)が、同機構として政府に提出する提言案について説明した。内容は、産業革命以降の人為的温暖化を断ち切るには、全人類の危機意識の共有と、年月をかけたそれぞれの生活文化に対応した地道な努力しかないという考えに立って各種の温暖化防止対策を提示したもの。

CO2半減を必要条件とする全世界の目標を明示したり、CO2排出大国や途上国・先進国の対策、産業別の削減、原子力や巨大水力発電、直流送電などを活用した大容量発電の国際協力による実現等を掲げた。

日本の防止対策については、温暖化ガス70から90%削減のため、リデュース・リユース・リサイクルと、地産地消型の自然エネルギー供給、それを通じた産業活性化モデルを、技術力と文化力を元に達成することだとしている。この原案をもとにシンポジウム成果を踏まえてまとめ、今後、同機構では福田首相に提言書を手渡すことにしている。

シンポジウムでは、引き続き国内の専門家、中国と米国の政府代表者による基調講演・パネル討論を行った。まず中国の高世憲氏(国家発展改革委員会エネルギー研究所エネルギー・経済発展戦略研究センター所長)が中国のエネルギー需要の拡大と、気候変動への対処を説明。米国のロバート・F・セクタ氏(駐日大使館経済担当公使参事官)は、世界最大の温暖化ガス排出国である米国では290億ドルも投資して環境問題に取り組んでいることを紹介し、もうすぐ最大の排出国でなくなると語った。

日本からは、経団連環境安全委員会委員長である、昭和シェル石油会長の新美春之氏が、低酸素社会のへの取り組みとして、そのグランドデザインを世界で共有することや、意味のない国際競争をしないこと等が重要だと述べた。また、当面はまず徹底した省エネに努力すべきだとした。

「気候変動+2度C」や「地球温暖化地獄」等の著書で、温暖化による人類危機が切迫していることを強く主張している、東京大学の山本良一氏(生産研教授)は「早ければ今夏にも北極海の氷がすべて解けてしまう心配も迫っている」と述べ、大変な状況になっていることを説明した。また「科学者は5年後には限界を超えてしまうと考えている。政治的な大転換が必要だ」と述べ、科学者と政治家の認識のギャップを問題点として指摘した。

最後に、進行役の小島明氏(日本経済研究センター会長)が「世界は温暖化防止対策に危機感を持って取り組むべきである。対応は一つではない。スピーディーに取り組むことが肝心だ。切迫感を持って個人・企業・政府が推進しないと間に合わない」とまとめた。 (科学、3月21日号1面)