13年以降の温暖化対策

2008年4月6日(日)「しんぶん赤旗」

【バンコク=井上歩】バンコクで開かれていた国連気候変動枠組み条約の特別作業部会は五日未明、京都議定書期間終了後(二〇一三年以降)の地球温暖化対策の枠組みづくりを進めるための作業計画を採択し、閉幕しました。

作業計画によると、年内にあと三回開かれる作業部会で発展途上国への技術移転や資金問題などについてワークショップ(研究会)を開催。一年目は共通認識を探りながら、二○○九年末にコペンハーゲンで開かれる同条約第十五回締約国会議(COP15)での合意を目指して交渉を進めます。

作業計画によると、昨年十二月のCOP13(バリ)で主要テーマとしてまとめた▽長期目標▽温室効果ガス削減▽気候変動への適応(被害削減)策▽技術▽資金―を並行して関連性を持たせて検討していきます。

六月にボンで開かれる第二回作業部会では、資金と技術(支援)を通じた適応策、気候変動に取り組むための投資、途上国への技術移転の円滑化についてワークショップを開催。長期目標については、年末のCOP14と並行して開かれる第四回作業部会で検討します。

日本が提案した産業・部門別に温暖化対策に取り組む「セクター別アプローチ」は、計画策定で、ワークショップで検討する問題の一番目に記されていました。

ところが途上国から「適応策などほかに優先すべきことがある」と異論が出るなど調整が難航。その結果、技術移転を促進するための手段として第三回の作業部会で検討されることになりました。

交渉が本格化する〇九年の作業計画は、第四回作業部会までに決めるとしました。

幸運に過ぎなかった「食糧輸入大国日本」( 08/4/7)

NIKKEI NET 経済羅針盤 日本経済新聞

国際情勢がわかる 連載<第11回>

吉崎 達彦 氏

双日総合研究所 副所長

「溜池通信」主宰

幸運に過ぎなかった「食糧輸入大国日本」( 08/4/7)

もしもあなたがどこかの国の指導者であって、経済の方向性を決める立場であったとしたら、農業国と工業国のどちらを選ぶだろうか? 言い換えれば、今のグローバル時代において、農業国と工業国はどちらが「お得」だろうか。

目指すなら工業国より農業国がお得?

普通は工業国の方が「お得」と思うかもしれない。工業製品の方が付加価値は高そうだし、技術革新もあるし、いかにも先進国という感じがする。ハイテク産業を育成して、世界的な企業が続々と誕生する、となればますますカッコいい。おそらく世界中の国の指導者が、そういう産業政策を思い描いているのではないだろうか。

しかし考えてみてほしい。ここ数年、工業製品の価格は下落が進む一方だ。そして昨今の国際競争の激しさを考えると、このトレンドが逆転する可能性はきわめて低そうである。何より、中国やインドとコスト競争をしなければならないということは、利益なき繁忙を覚悟しなければならない。加えて工業国は環境問題もあるし、資源も大量に使うので、今から目指すのはあまりお勧めではないようである。

逆に農産物価格は上がる一方だ。そして今後も上がり続ける公算が高い。なにしろ食糧生産は自然環境の制約が厳しいので、設備投資によって生産能力を一気に倍にする、などという荒業が効かない。そして技術革新による生産性向上の余地も、それほど大きくはない。また、近年は異常気象や水不足による耕作不能が増え、将来の農産物供給に不安の陰を投げかけている。

そして農産物への需要は確実に増えている。世界の人口は増える一方であるし、新興国では経済成長によって生活水準が飛躍的に向上している。人はケータイやPCがなくても生きていけるが、メシは毎日食わないことには生きていけない。さらに言えば、農業は国土の環境保全にも役立つ。今の時代は工業国を目指すよりも、実は農業国の方が有利なのではないだろうか。

ニュージーランドという生き方

先月、ニュージーランドに出張している間に、そんなことを考えた。

ニュージーランドは、日本人にとってたいへん居心地のいい国である。四季のある温暖な島国であり、緑が多くて、火山と地震があって、温泉があることも日本と似ている。景色が似ているということで、『ラストサムライ』や『どろろ』などの映画はこの国で撮影された。治安がよく、車は右ハンドルだし、水道の水が飲めて、チップも払わなくていい。加えて日本語ができる人も多いので、外国に居ることをそれほど意識しなくて済む。学生の修学旅行などにはうってつけであろう。

その一方で違うところも少なくない。ニュージーランドは、日本より若干狭い程度の国土に、人口は400万人程度。横浜市、ないしは静岡県程度の人口しかない。羊の数は4000万頭なので、「人1人あたり羊10頭」である。つまり日本が工業国であるのとは対照的に、典型的な農業国というわけだ。

お陰で両国間の貿易は相互補完的である。日本はニュージーランドから酪農品や食肉、林産物、果実といった一次産品を買い、逆に自動車や電気機器といった工業製品を売る。お互いに持ちつ持たれつの関係だ。筆者は1996年からずっと、日本ニュージーランド経済人会議に参加しているが、両国関係はずっと良好である。それどころか「問題がなさ過ぎることが問題」などといわれることもある。

もちろん日本政府は、外国産の乳製品などに途方もなく高い関税を課している。このことに対し、ニュージーランド側には不満がある。しかし日本側が「良いお客」であるために、今まであまり大きな問題になることはなかった。少なくとも、民間同士の会合である日本ニュージーランド経済人会議において、農業問題で紛糾したという記憶は1回もない。商売の世界においては、「買い手は王様(Buyer is King.)」なのである。

日本は賢明な輸入戦略を

もっともこんな関係が、いつまでも続く保証はない。農業国の立場は強くなり、工業国の立場は弱くなっている。ニュージーランドと日本のバランスも、少しずつ変わりつつあるように思える。

今月、ニュージーランドは先進国では初めて、中国と自由貿易協定(FTA)を締結する。経済成長を続ける13億人の市場が、これからニュージーランドの農産物のお得意様になっていくことを見越しての決断である。インドなど高い経済成長を続ける多くの新興国が、それに続くだろう。彼らは豊富な経常黒字を有し、海外の高品質な農産物の味を覚え始めた。こうした中で、買い手としての日本のプレゼンスは相対的に低下している。

ところで今回の筆者のニュージーランド出張は、ジェトロ主催のセミナーに参加するためであった。東アジアの経済統合の必要性を説くとともに、「ASEAN+6」の枠組みに支持を集めることが目的である。

これに対し、ニュージーランド側の代表的な反応は、「ASEAN+6という枠組みは大いに結構だ。ASEAN+3にインド、豪州とともに、わが国が加えてもらえるのはまことにありがたい。しかし、なぜ日本は二国間のFTAには消極的なのか?」であった。 これには同国特有の事情がある。日本は豪州とのFTAの共同研究を開始しているが、ニュージーランドはまったく考慮されていない。ところがニュージーランドと豪州の経済はほとんど一体化しており、仮に豪州のみが日本向け関税が下がることになれば、ニュージーランドの畜産・酪農製品が比較劣位となる。とはいえ、日本の対ニュージーランド輸入の半分程度を農産品が占めている現状では、FTA交渉は政治的にきわめて困難といえる。(まして昨今の国内政治情勢では!)

この4月1日から、政府の小麦売り渡し価格が30%引き上げられ、パン、麺類、菓子など多くの食品の値段が上がることになった。牛乳、食用油、しょうゆなども値上がりしている。世界的な穀物価格の高騰が一度に押し寄せてきた形である。

「日本の食料自給率は4割に過ぎない。もっと自給率を上げなければならない」とは、しばしば指摘されるところである。筆者もまったく同感だが、「国内生産が4割」という事実の陰には、これまでの日本が「食料の6割も輸入できる幸運な国」であったことも無視できない。日本には経常黒字があったし、農業国との友好的な関係もあった。そして彼らは「日本はよいお客」と見なしてくれていた。

そうした古き良き時代が終わりつつある。国内需要が少子・高齢化で先細りとなり、買い手として強力なライバルが続々と誕生する中で、日本はいかにして国内の食料需要を満たしていくことができるのか。国内農業の建て直しも急務だが、賢明な輸入戦略を持つことも同様に重要であると強調しておきたい。

(双日総合研究所副所長・吉崎達彦氏 寄稿)

南極の大規模棚氷、温暖化で崩壊寸前(CNN)

(CNN) 英南極調査所(BAS)は、南極で地球温暖化の影響により、米コネチカット州とほぼ同じ1万4500平方キロメートルのウィルキンス棚氷が崩壊の危機にさらされている、と発表した。

米コロラド大学(コロラド州ボールダー)にある国立雪氷データセンターの教授は先月28日、米航空宇宙局(NASA)の衛星写真でウィルキンス棚氷の一部が崩れているのを発見し、BASに通報した。南極では夏の終わりのこの時期、こうした現象が最もひんぱんに見られるが、同日の午前と午後に撮影された写真を比較して崩壊が確認されたのは驚くべきことだという。

BASは通報を受けて、ウィルキンス棚氷の調査を実施した。BASのウェブサイトによると、棚氷の面積は10年前から6%前後縮小したが、教授が指摘した部分を含め、今月8日からさらに570平方キロメートルが失われた。これによって幅が細い棚氷の一部分が、残りの大部分を新たな崩壊から守る形になっている。

関係者は、棚氷の崩壊がこれほど早く進行することを予想していなかったと述べ、今後数日間から数週間の間に棚氷の運命が判明するだろうとしている。

南極ウィルキンス棚氷、温暖化で大規模崩壊が進む

2008年03月29日 04:17 発信地:南極

AFP BB NEWS

【3月26日 AFP】(3月29日 写真追加)南極大陸の南米側に突き出た南極半島(Antarctic Peninsula)にある南極最大のウィルキンス(Wilkins)棚氷の一部が、地球温暖化の影響で崩壊し始めていることが、米コロラド大学ボールダー校(University of Colorado in Boulder)の米国雪氷データセンター(National Snow and Ice Data Center、NSIDC)が公開した衛星画像で明らかとなった

ウィルキンズ棚氷の大規模な崩壊は、2月28日に南西に位置する面積41キロ×2.4キロの氷山が分離したことから始まった。氷山の分離により棚氷の内部が崩壊し、これまでに414平方キロメートルが消失した。

NSIDCの首席研究員Ted Scambos氏の発表によると、この結果、全面積1万2950平方キロメートルのウィルキンズ棚氷の大部分は現在、棚氷を囲む2つの島の間に横たわる5.6キロメートルの帯状の氷で支えられている状態だという。氷解がもう少し進めば最後の「控え壁」が崩壊し、今後数年間でウィルキンズ棚氷の半分を失う可能性もあるという。

南極半島の西側では過去半世紀にかけ、10年間にセ氏0.5度と世界で最も高い気温上昇率が観測されている。

Scambos氏はウィルキンズ棚氷の崩壊を3月に初めて観測した。「ウィルキンズ棚氷は少なくとも過去数百年間は現在の位置にあったと考えられるが、暖気と海洋波が崩壊を引き起こしている」と指摘した。

南極では夏が終わるため今後数か月間はこれ以上の棚氷の崩壊はないと予測される。「しかし、来年1月にはまた崩壊が進行するのをみることになるかもしれない」(Scambos氏)。

過去50年間に南極では、1万3000平方キロメートル以上の棚氷の崩壊が起きている。これにより地球上の海面が著しく上昇する可能性がある。現在、海面は毎年3ミリずつ上昇しているが、今世紀中に1.4メートル上昇するとの予測もある。(c)AFP

エコスイッチ、オン プロジェクト

町から排出するごみゼロを目標とした「もったいない宣言」など環境保護活動に力を入れる大木町は、本年度から温室効果ガス削減を目指す「エコ・スイッチ・ONプロジェクト」を始めた。

 地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの庁舎からの排出量を、基準年度(2006年度)から6%削減させることを目標とする。期間は本年度から5年間。

 具体的には資源を節約するため「マイはし、マイバッグ、マイ弁当、マイ水筒」の持参を励行する。壁面の緑化や照明器具に節電シールを張るほか、ペーパーレスを推進するため電子メールの活用やチラシ、コピーの裏紙の利用を徹底するなど。

 活動を長続きさせるため、若手職員を中心にクリエーティブチームと、各課の課長級職員を中心にアクティブチームを結成。クリエーティブチームは定期的に会合を持ち、アイデアを募るほか達成度の評価や計画の見直しを行う。アクティブチームは、職場での課題の把握や指導を行う。

 同町環境課の古賀利一さん(42)は「大木町で付けっぱなしにしていいのはエコ・スイッチだけ。活動が町民や事業所に広がるよう頑張りたい」と話している。

=2008/04/05付 西日本新聞朝刊=

掛川市が官民一丸で温暖化防止(中日新聞)

掛川市が官民一丸で温暖化防止 計画策定し温室ガス減へ数値目標

2008年4月4日

掛川市は3日、市役所だけでなく商店、工場なども含め市域全体から排出される温室効果ガスの削減を目指した地球温暖化対策の地域推進計画「かけがわ“地球との約束”行動計画」を策定したと発表した。県によると、県内市町で地域推進計画を策定したのは、現時点では静岡市と掛川市だけという。 (楯三紀男)

推進計画は、現状では2012年度で207万1000トンになると予想される温室効果ガス排出量(CO2換算)を、26万1000トン削減して181万トンとする内容。基準となる05年度との比較では、2%増の水準に抑制する。

京都議定書では08-12年度に「1990年度より6%削減」と掲げられているが、掛川市の場合、企業進出や活発な産業活動により、90年度に比べ既に約2倍にまで増加している。推進計画では、消灯や冷暖房温度の見直し、企業の省エネ機器導入など「便利すぎず、不便を感じない程度で達成可能」(同市)な目標にしたという。

市では目標を達成するため、家庭では「みんなで広げよう地球環境の環プロジェクト」、廃棄物を対象にした「ごみ減量大作戦」、学校対象の「エコ・スクールプロジェクト」、事業者対象の「STOP温暖化パートナーシップ協定」-など、7つを重点施策に掲げた。

戸塚進也市長は「レジ袋削減などで環境大臣表彰を受け、ほかにもできることはあると実感した。企業や住民とともに取り組む。そのために市内各地で徹底して説明会を開きたい」と目標達成に意欲をみせた。

『ゴア氏閣僚級に』 オバマ氏、温暖化対策で 米大統領選

2008年4月3日 夕刊  東京新聞

 【ワシントン=小栗康之】米大統領選挙の民主党指名候補を目指すオバマ上院議員は二日、ペンシルベニア州の集会で、大統領になった場合、地球温暖化問題に対応するため、ゴア前副大統領を閣僚級メンバーとして政権に迎える意向を表明した。オバマ氏は「ゴア氏はひとかどの人物だ。地球温暖化問題を解決するため、中心的な役割を果たすことになるだろう」と指摘。

 「私とゴア氏はこの問題で意見交換し続けているが、気候変動は十年、二十年後ではなく、今こそ、取り組まなければならない問題だ」と述べた。

 ゴア氏は環境問題への取り組みを評価され、昨年のノーベル平和賞を受賞した

京都議定書、温暖化ガス削減の実行期間スタート

日本経済新聞

先進国に温暖化ガスの排出削減を求める京都議定書の実行期間(2008―12年度)が1日、国内で始まった。日本は期間中の温暖化ガス排出量を、1990年度に比べ平均で6%削減する義務を負う。鴨下一郎環境相は1日の閣議後の記者会見で国民に対し「地球温暖化がすでに起きていることを理解してほしい。水や電気の節約、車の運転の仕方など今すぐにできることから取り組んでほしい」と呼びかけた。

日本の温暖化ガス排出量は、06年度時点で13億4100万トン(速報値)で、90年度比6.4%増加している。このため目標達成には12%の大幅削減が必要になる。

政府は「京都議定書目標達成計画」を05年に策定したが、目標達成が難しくなってきたため、同計画を改定して3月28日に閣議決定した。産業界の自主的な削減計画をさらに強化するほか、排出量の増加率が大きい家庭やオフィスでも省エネ活動の強化が求められている。 (13:36)

ろうそくともし 温暖化考えよう(北海道新聞)

ろうそくともし 温暖化考えよう ガイアナイトに道民5000人(03/31 09:36)

環境問題が主要議題となる七月の北海道洞爺湖サミットを前に、エネルギーを大量消費する暮らしを見つめ直そうと、電気を消してろうそくをともす「ガイアナイト」が三十日、道内各地で開かれた。官民合同の同サミット道民会議が呼びかけたもので、五千人を超える道民と百三十二の企業・団体が参加。多くの関連イベントも行われた。

帯広市では、ろうそくを手に市内約一・二キロをパレードする「ガイアナイト・インとかち」が開かれ、市民約三百人が参加。街路灯や看板の照明の半分を消した市中心部の「西二条通」では、ろうそくの列が夜のまちに浮かんだ。市民団体「スローウェーブすんく村」などが「地球環境や子どもたちの未来を語り合おう」と企画。道の山本邦彦副知事も参加した。

網走市と紋別市のホテル計五カ所では、流氷をくりぬいてキャンドルをともす「オホーツク流氷ガイアナイト」を開催。地球温暖化の影響で年々減る流氷の危機を訴えた。網走市内の主婦、堀内弥生さん(34)は「すごくきれいで、見入ってしまった」と感動した様子。

日高管内新冠町のレ・コード館では高さ約三十メートルの同館タワー「優駿(ゆうしゅん)の塔」を一本のろうそくに見立て、タワーの窓際にろうそくを並べた。電力を使わない蓄音機でレコードを楽しむミニコンサートなどもあり、同町と同管内新ひだか町の十三組四十一人の親子が環境問題を語り合った。

札幌市内でも、大通公園のテレビ塔のイルミネーションを消灯。道庁赤れんが庁舎やホテル、スーパーなどでも看板照明などを消すなどして、環境問題への取り組みをアピールした。

地球温暖化問題に危機感持て(知財情報局)

地球温暖化問題に危機感持て、早急に低酸素社会への道を進むべし

【その他】発信:2008/03/31(月) 08:43:48

~HIAのシンポジウムで討論~

(社)先端技術産業戦略推進機構(HIA)は、第2回国際シンポジウム「地球温暖化と低酸素・循環型共生社会への道」を、東京・赤坂の国際交流基金国際会議場で開催した。会場には250名以上の参加者が集まり、温暖化問題への関心の高さをうかがわせた。

今夏7月に日本で行われる洞爺湖サミットでは、地球温暖化防止の枠組みが主要テーマの一つに予定されている。これを睨んで、今回のシンポジウムでは同機構の西澤潤一会長(首都大学東京学長)が、地球規模の温暖化・エネルギー対策の切り札として、環境問題の少ないミニダムによる水力発電と、交流より50倍も遠くまで電力を効率よく運べる直流送電の技術を活用した電力システムを提唱する講演を行った。

西澤氏は「人類は当面、温暖化対策に取り組む必要がある。自分やその子どもの時代はともかく、さらに次の孫の時代にCO2で人類が滅亡することを想像すれば、現在、その対策に手をこまねいている時ではないことがわかるはずだ」と述べ、大気中のCO2濃度が4%以上に高まると人間が生存できなくなる危険を警鐘し、低酸素社会・循環型共生社会を実現するため、一刻も早く同氏が提唱する発電システムを、国をあげて導入すべく検討するよう声を大にして訴えた。

続いて、同機構顧問である内田盛也氏(日本学術交流財団理事)が、同機構として政府に提出する提言案について説明した。内容は、産業革命以降の人為的温暖化を断ち切るには、全人類の危機意識の共有と、年月をかけたそれぞれの生活文化に対応した地道な努力しかないという考えに立って各種の温暖化防止対策を提示したもの。

CO2半減を必要条件とする全世界の目標を明示したり、CO2排出大国や途上国・先進国の対策、産業別の削減、原子力や巨大水力発電、直流送電などを活用した大容量発電の国際協力による実現等を掲げた。

日本の防止対策については、温暖化ガス70から90%削減のため、リデュース・リユース・リサイクルと、地産地消型の自然エネルギー供給、それを通じた産業活性化モデルを、技術力と文化力を元に達成することだとしている。この原案をもとにシンポジウム成果を踏まえてまとめ、今後、同機構では福田首相に提言書を手渡すことにしている。

シンポジウムでは、引き続き国内の専門家、中国と米国の政府代表者による基調講演・パネル討論を行った。まず中国の高世憲氏(国家発展改革委員会エネルギー研究所エネルギー・経済発展戦略研究センター所長)が中国のエネルギー需要の拡大と、気候変動への対処を説明。米国のロバート・F・セクタ氏(駐日大使館経済担当公使参事官)は、世界最大の温暖化ガス排出国である米国では290億ドルも投資して環境問題に取り組んでいることを紹介し、もうすぐ最大の排出国でなくなると語った。

日本からは、経団連環境安全委員会委員長である、昭和シェル石油会長の新美春之氏が、低酸素社会のへの取り組みとして、そのグランドデザインを世界で共有することや、意味のない国際競争をしないこと等が重要だと述べた。また、当面はまず徹底した省エネに努力すべきだとした。

「気候変動+2度C」や「地球温暖化地獄」等の著書で、温暖化による人類危機が切迫していることを強く主張している、東京大学の山本良一氏(生産研教授)は「早ければ今夏にも北極海の氷がすべて解けてしまう心配も迫っている」と述べ、大変な状況になっていることを説明した。また「科学者は5年後には限界を超えてしまうと考えている。政治的な大転換が必要だ」と述べ、科学者と政治家の認識のギャップを問題点として指摘した。

最後に、進行役の小島明氏(日本経済研究センター会長)が「世界は温暖化防止対策に危機感を持って取り組むべきである。対応は一つではない。スピーディーに取り組むことが肝心だ。切迫感を持って個人・企業・政府が推進しないと間に合わない」とまとめた。 (科学、3月21日号1面)